まず、医者にとってのインセンティブである収入の面から、薬を減らすことについて考えていきましょう。よく勘違いされていることとして、薬を多く処方したからとって医者の収入が増えるわけではないということです。むしろ多くの種類の薬を処方すると、病院の収入は減る仕組みになっています。
具体的には、7種類以上を処方した場合の処方料が13点、書状せん料が28点低くなります。1点が10円の菅さんなので、130円、280円低くなるということです。
これは厚生労働省がおこなっている、医師の処方を抑制するための処置なのです。なので、収入や病院経営という視点だけから考えると、薬は7種類を超えない方が医者としてはありがたいのです。
しかし、だからといって経営のために患者さんの薬を減らそうと思う医者はそれほど多くありません。
主に医院やクリニックを対象としたアンケート調査では、7割の医者が、病院経営の点からは不利になるが、患者さんにとって必要なので薬を出したという結果が得られています。
残りの3割も、別の日に改めて受診してもらったり、他の病院の受診を進めたりと患者のためになる手段を選んでいることがわかります。
では、必要な数だけ処方しているのにもかかわらず、患者さんから、薬を減らしてほしいと言われたらどうでしょうか。医者はおそらくとても悩む問題です。本当に必要なら、病院経営がマイナスになっても処方したい、しかし、患者さんは薬が多すぎて辛いと言っている。さらに病院が潰れてはこの地域のためにも良くないし、自分も職を失ってしまうというような葛藤が聞こえてくるようです。
このように悩んだ結果、どちらかと言えば、薬の処方を減らす方向に心が傾くように思います。なぜなら、医者にとっての大きなインセンティブは患者さんが良くなることなので、薬が減っても、体調が変わらずに飲むのが楽になれば、これは医者にとっても嬉しいことなのです。