患者さんが現在飲んでいる薬の種類を減らしたいと言ったら医者はどのように思うのでしょうか。特に高齢の方に多いと思われますが、年々飲む薬の量が多くなってしまい、なぜ、こんなにたくさんの薬を飲まなければいけないのだろうと感じる方も多いと思います。80歳以上になると本当にたくさんの種類の薬を飲んでる患者さんがかなり多くいらっしゃいます。
1日10種類以上ものお薬を、合計で20錠、飲んでいるという患者さんも珍しくはありません。これでは、薬を飲むという行為だけで、疲れてしまいそうな気がします。また、朝にはどの薬を飲んで、夜にはどの薬を飲んでなどの薬の管理も10種類以上となるととても大変でしょう。高齢者の方ですから、自分では管理できず、家族の方にサポートしてもらっている方もいるかもしれません。
そうなると家族の負担も増えることになります。また、心配性の方の場合は飲み忘れたらどうしようとか、今日はちゃんと飲んだかなど薬の飲み忘れについて不安になってしまうこともあるかと思います。では、なぜ高齢者になるにつれて飲む薬がそれほど多くなってしまうのでしょうか。実は、薬の種類が多いのは、医者に原因があるのです。人間も80歳を超えてくる年齢になると、様々な病気を患っている人が多くなってきます。
それも一つや二つではなく複数の病気を抱えていることが多いでしょう。胃潰瘍、便秘、不眠、腰痛、花粉症、高血圧、糖尿病など様々な病気です。これに対して医者は病気ごとに薬を出します。上記の病気はそれぞれ診てもらう科が異なりますので、それぞれの科からお薬が出る、ということになるのです。医者は本来専門領域の薬しか処方しません。最近では「おくすり手帳」というものが浸透してきて、それを医者に見せる方も多くなってきているかと思いますが、医者はお薬手帳を詳しく見たりはしません。
薬が重複しないかをチェックするくらいで、薬の数までは気にせずに自分の専門領域の薬を処方することが多いのです。つまり、飲む薬の全体のバランスを考えるまとめ役のような存在がいないのです。これでは、症状が出るたびに様々な科にかかることになるので、どんどん薬が増えていってしまうということを繰り返しているうちに、結果的に患者さんは10種類以上の薬を飲まなければいけないということになってしまうのです。