医者に対して謝礼金を渡す患者さんは実際にいて、実際にそのお金を受け取っている医者もいるのですが、医者にお金を渡すことによって実際に治療の結果は変わるのでしょうか。袖の下は横行しています。あるテレビ番組で指摘されたことがあり、実際にそのような事実があるのだということが世間に広まりました。がんの名医と呼ばれる医師に対する、「患者から袖の下をもらったことがあるか」という質問に対して50人中46人が「ある」と回答していました。
この番組をたまたまみていて、現実はそうなのだろうなあと同じ医者として思いました。患者さんからの謝礼金は、昔は医師の間で「ゲシュンク」という隠語で呼ばれていたそうです。ゲシュンクとはドイツ語で贈り物という意味です。謝礼金は贈り物として捉えられていたのですね。ここで、どれくらいの医師が、患者さんから謝礼としてお金を受け取っているかを考えていきたいと思います。
それを調査したアンケートがあるので、その結果を見ていきましょう。
医師2000人以上に「患者からの謝礼金(品物は含まない)を渡された場合、受け取っていますか」と質問した調査です。この調査によると、基本的には受け取っているという人が約40%、基本的には受け取らないが、どうしても断れないときもある人が約40%、という結果でした。つまり、アンケートに回答した医師のうち約8割の医者が患者さんからの謝礼金を受け取ったことがあるという結果になりました。
医師は患者さんの治療について大変大きな裁量権、決定権を持っています。たとえば、がん患者さんの手術待ちの順番を入れ替えることだってやろうと思えば可能なことです。これが、あの患者さんはお金をくれたから、手術の順番を早めてあげようといったように患者さんからの金品で手術の順番や治療法方法が変わっていたとしたら、とんでもないことです。
医者としてあり得ない行為だと思いますし、そんな医者はいないと信じたいですが、医者だって人間なので、お金をくれたり、院長などの病院有力者と親密であったりした場合、自分への利益を優先させてしまったりと、いつもいつも公平な判断ができるとは限らなくなってしまいます。自分は絶対にそのような医者にはならないと思っていても、実際に患者さんからお金を受け取ってしまうことで少しでも医者としての何かが揺らぐ可能性があるかもしれないと考えている医者は、絶対に金品等は受け取らないと決めているでしょう。